防水性能について
もはや腕時計に防水が付いていない方が珍しい時代になりました。
しかしながら、防水といえど水中で対応できる物から水しぶきが限界の物までいろいろです。 今回は時計の防水に関しての基礎知識をご紹介させていただきます。
また、私は時計を修理する側として、いくつかの防水時計に関するトラブルを見てきました。
それらは「メーカーが公表する情報」と「実際に使用するユーザーの認識」にズレが有るように感じたので合わせてご紹介させていただこうと思います。
防水の単位
腕時計で使われる防水性能は「気圧」 「bar」「atm」「m(メートル)」のどれかで表されます。
完全にイコールではないのですが、10気圧=10bar=10atm=100mです。
時計によって違いますが、大抵は裏蓋か文字盤に記載されています。
※ちなみに何も表記が無いものは「非防水」。「Water resistant」の表記のみは3気圧防水です。
メーカーによる防水性能の目安
腕時計の防水性能は主に「3気圧」「5気圧」「10気圧」「20気圧」の4つです。 ※中にはスキューバダイビング用の防水もありますが今回は説明を省きます。
以下、メーカーによる防水性能の目安を表したものです。
【3気圧】
- 生活の上での防水に対応。 洗顔や雨に濡れる程度であれば大丈夫。
【5気圧】
- 水仕事、水泳などに対応。
【10気圧】
- スキンダイビング(素潜り)に対応。
【20気圧】
- スキンダイビング(素潜り)に対応。10気圧防水よりさらに強い
多くのメーカーは大体これと同じレベルに分けて説明書に記載しています。
実際に使用する場合は
実際の防水性能は先ほどご紹介したようにはいきません。 言葉を鵜呑みにして使うと危険です。
おそらくメーカーはしっかり計算、検証を行っているはずなので間違いはないと思いますが、「メーカーの計算」と「実際に使用するユーザーの認識」には違いがあるように感じます。
どちらが悪いというわけではないのですが、実際に使用する時は注意が必要です。
例① 水泳で使用する
5気圧は水深50mの圧力に耐えられる目安になります。 一般的な水泳で水深50mに潜ることなんてありませんから、防水としては問題ないように思います。
しかし、泳いだ時は腕をかきますよね。 この圧力は非常に強く、5気圧防水では到底耐えきれません。
これは10気圧防水以上にも言えます。 10気圧防水は素潜りであれば対応できると記載されていますが、実際は激しく泳いだり、潜ったりすると耐えきれない場合があります。
ちなみに水道の蛇口から出る水も圧力が強いため、直接時計に当てるのは危険です。
メーカーは「水深50メートルの圧力(同等の圧力)に耐える」と言い、ユーザーの多くは「水深50メートルで実用的に使用して耐える」と認識しています。
あくまで計算上の5気圧防水という事をご理解いただきご使用いただければと思います。
例② 10気圧の時計に水が入った
私個人の意見ですが、水周りで使用する時計は10気圧以上の防水をオススメします。 しかし、10気圧防水と言えど経年劣化を忘れてはいけません。
つまり、時間が経てば防水性能は落ちるという事です。 パッキンはゴムなので劣化しますし、プラスチックケースの時計はケース自体が歪み始めていると防水性能は落ちます。
水周りで使う場合は定期的な防水検査と防水パッキンの交換をオススメします。
形あるものは必ず劣化します。 10気圧防水の時計は永遠に10気圧防水ではないのです。
してはいけないこと
いくら防水と言えど完全に水に耐えられるわけではありません。
実は水中でのボタン操作、リューズ操作は厳禁です。 隙間から水が入り込みます。
一部の時計は操作が可能なものが有りますが、ほとんどは不可の物です。
水中でなくても濡れた手や水周りでの使用の際はボタン操作、リューズ操作を避けてください。
【風呂】
入浴の際も時計を着けている方がいます。 ※銭湯に行くと5回に1回ぐらいは見ます。
防水時計は水に耐えるための物ですが、お湯には弱いです。 お湯の熱は時計やパッキンに悪影響を起こします。
また、石鹸カスも天敵です。 シャンプーなどの石鹸カスは防水パッキンの隙間に入り込み防水性能を落としたり、不具合の原因となります。
【海水】
海水も水と言えば水ですが、塩分があまり良くありません。 サビの原因となり、パッキンも劣化させます。
私は海の中で使った後は真水で優しく洗い、水分を拭きとっています。(ちなみに20気圧防水未満の時計は使いません。)
私が水周りで時計を使うとき
私が水回りで時計を使うときのお話をさせていただきたいと思います。
私は水周りで時計を着けません!と言い切りたいところですが、どうしても時計が無いと不便な時ってありますよね。
そのようなときは、水周りでは10気圧以上、水中やアウトドアは20気圧以上を使うようにしています。
もし、5気圧以下の時計を着けていて水がかかる可能性(手を洗うなど)がある場合は時計を外します。
時計を守るためだと思えば苦ではありません。
水周り、水中で使うなら
あまり1つのメーカーに肩入れをしたくはないのですが、私は防水を重視するならG-SHOCK系の時計をオススメしています。
G-SHOCK (Baby-G) の防水トラブルは非常に少ないです。 デザインはどうしても偏りますが、アウトドア関連は1本で対応できるのが何より便利です。
最後に
防水時計と言えど水は天敵です。 iPhoneが耐水性能を兼ね備えましたが水周りで使おうとしている方は少数だと思います。
時計も同じです。 時計も精密機械なので出来るだけ水は避けてご使用ください。
実は、防水と言えど、水が原因の故障はメーカー保証対象外になるケースがあります。
非常に多いトラブルの1つでユーザー側も納得がいかない気持ちは分かりますが、これが「メーカーの計算上の防水」と「ユーザーの機能の認識」の差が大きいことが原因の一つではないかと思います。
このサイトに訪れていただいた方には防水性能の事をご理解頂き、水周りでも時計を上手くお使いいただけることを願っています。